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「人間の生と死をとことん表現したい」 シドニーで活躍する日本人画家

吉田憲司
Kenji Yoshida

■PROFILE
吉田憲司(よしだけんじ):1971年東京生まれ。シドニーを拠点に創作活動を続ける画家。美術学校卒業後、1999年に原宿でグループ展を開催するが、未知の経験を絵の肥やしにするため海外放浪の旅に出発。数年にわたって中国、タイ、パキスタン、インド、マレーシアとアジア諸国を放浪の末、オーストラリアに定住。創作活動を再開する。「何事も簡単じゃつまらない。人生は難しい方がおもしろいし、作品だって気持ちいいよりも気持ち悪い方が、多くが伝わる」という信念を持って、独特の画風で作品を作り続ける。

【INTERVIEW】

今回3度目の個展ということですが、初回、2回目と経てきた感想は?

 2004年、05年と紀伊國屋ギャラリーで個展を開いてきて、自分自身がとても変わりました。初回はまさに手探りの状態で、いったい自分の作品がシドニーの人に受け入れられるのかどうか全く分からないで作品を作ったようなものでした。でも、いざフタを開けてみると、すごくいろいろな反応をもらうことができて。アジア系の若者からオージーの若者までいろんな国の人が、僕の作品をおもしろがってくれるんです。特にデザインを勉強している学生などは、僕の絵が日本ならではのアニメーション的でおもしろいとか、グラフィティ・アート的なのにそれを油絵で表現する点がおもしろいとか。自分ではそんな風に意識して作ってないんですけどね(笑)。でも、そういういろんな受け取り方をされていることを知って、「こうしなきゃいけない」という考え方が消えたんです。気持ちがすっと楽になりましたね。自分が作りたいものを自由に作れるようになった感じです。

今回の個展のテーマは ?

 今回は小さい絵をたくさん書きました。これは自分にとって新しい挑戦だったんです。今までは1メートル、2メートルという大きいキャンバスばかりを使っていましたが、小さい作品を作ろうとするといろいろな点で難しい問題が出てくる。例えば小さい作品ならでの見栄えがする構図とか、どういう色をつかってまとめたらいいのかとか、とにかく頭を使うんです。限られたスペースの中で自分のイメージをどう表現するか、本当に楽しみながら作品作りができました。ただ、作品のテーマ自体は、僕が絵を描き始めた時から一貫して変わらない「人間の生と死」。今回の10点の作品では、人間の表裏一体の部分である「生きることと死ぬこと」を突き詰めました。

その中で1点、巨大な作品がひと際目を引きますが

 縦は1.2メートル、横は4メートルもあるんです。今までにない大きさで、これも楽しみながら描けました。イメージは近未来都市。東京、ニューヨークといった大都市の近い将来ですね。作品に近寄ってよく見てもらえれば、街の中でいろんな人間の生と死の営みが描かれているのが分かるはずです。作品名は「カトリーナ」。昨年8月に米国ニューオリンズを襲ったハリケーン・カトリーナから来ています。あの悪夢のような事件には、ものすごい衝撃を受けました。孤立した水びたしの街に取り残された黒人たちを映した映像は、ジャズとブルースというニューオリンズのイメージを一辺に吹き飛ばすものでした。まさに米国の暗い部分を浮き彫りにしたあのハリケーンは、実は救世主だったのかもしれない。そんなことを考えながら、テロや戦争で混沌としている今の世の中を表現しようと思い、作品に取り組みました。

今後はどんな展開を考えていますか ?

 昔から少しずつはやっていたんですが、最近、木を使った彫刻にハマッてるんですよ。イメージを立体的に表現するのがすごくおもしろい。今は彫刻デザインをした額を作ったりしています。そのうち家具にも挑戦したいですね。こんな椅子があったらな、なんて想像しただけでわくわくしますね。
 それと、今年はオーストラリアだけじゃなくて、日本とヨーロッパ、米国で個展を開きたいですね。外に向かって積極的に展開していこうと企んでます。

最後に25 today.com読者にメッセージを

 とにかく、足を運んでいただいて、何かを感じてもらえれば嬉しいです。応援をよろしくお願いします。

カトリーナ

カトリーナ
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