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 オーストラリアのファッション都市らしく、メルボルンでは大ぶりで個性的なジュエリーをかっこよく身に着けている人たちをよく見かける。

及川爾奈(おいかわにな):コンテンポラリー・ジュエリー・デザイナー
1997年来豪。現在RMIT大学院で、世界的に有名なコンテンポラリー・ジュエリー・アーティスト、ロバート・ベインズ氏に金銀細工(Gold & Silver Smithing)を師事。最近では、「見せるジュエリー」として作った作品が各アート賞で入賞を果たすなど、評価が高まっている。一方で、彼女の作り出す「身に着けてもらえるジュエリー」を置く店も増えてきている

 今回話を聞いたのは、RMIT大学院でコンテンポラリー・ジュエリーの技術やデザインを学ぶ一方で、ほかではあまり見かけない細かなディテールと鮮やかな色使いで、既にジュエリー界では高い評価を得ている及川爾奈さんだ。

「RMIT大学院に入ってまだ1年なんですけど、自分でもすごく成長したと感じています。やはり一緒に学んでいる人たちも本当にすごく上手で、アイデアも独創的で、それを見ているうちに自然と、自分でもがんばるようになったんだと思います。だから、今こうしていろんなところから声をかけてもらえるようになったのも、そうした努力が作品にも表われるようになってきた結果なのかなと思っています。

 私の研究の1つに樹脂があるんですが、樹脂と言ってもたくさん種類があって、1つひとつの特徴が全部違うんです。それでいろいろ試して見つけたのが、ただ型に流して形を作るというだけじゃなくて、糊として使ったり、別の素材の上にかけたりとか、いろんな使い方ができるということ。その透明な樹脂の中に、小さな世界というか空間を、中からデザインして、それを体に着けられるようなものに落とし込んでいくというのも課題の1つですね。

 新しいものを作る時は、着け心地は全く考えていません(笑)。例えば、ネックレスを作ったとして、それを作り終えてから初めて、『これ、すごくきれいだけど、着け心地がすごく悪い』というのが分かるんですね(笑)。それが分かったら、今度は少し違う形で同じものを作るんですけど、その時は前回見つけた着け心地の悪かった部分を改善して作るようにします。そうやって、少しずつ改良して着けられるものにしていくんです。


中央の樹脂でできている「石」の部分は、
内側の色漬けからすべて及川さんの手作りだ



留め金の部分にもこだわったという自信作
 賞にエントリーするものと、人に身に着けてもらうためのものとは完璧に分けています。単純に言えば、人に見せるものと着けてもらうものの違い、かな。今はだいたい8割が見せるもの、2割が人に身に着けてもらうものの割合で作っていますね。でも、今はまだ自分のすべてを表現しきれていないというか、自分をどこか抑えているように感じるので、さらに実験を重ねて、もう少し技術が上達したら、もっと着けにくいものを作っていくと思います(笑)。

 作品を作る時は常に、ほかの人とは重ならないアイデアで、“絶対に自分だけにしか作れないもの”という部分を強調しながら作っていきます。それが常に目指しているところですね。長期的には、もっといろんなものを作れるようになりたい。だから、今はとにかく技術を磨いて、どんな形でも作れるようになりたいし、そうなった時には今度は同じようにジュエリーを作っている人たちだけじゃなくて、いろんな世界の人から評価してもらえるようになれると思うんです。そうやって、例えば、アートでも工業デザインでも、どんな世界に向けても見せることができて、きちんと評価してもらえるもの、ゆくゆくはそういうものを作りたいと思っています」


及川さんの作品取扱店
●クラフト・ビクトリア(Craft Victoria)
★Web:
●ピーシズ・オブ・エイト(Pieces Of Eight)
★Web: www.piecesofeight.com.au

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