自分の道をひたすら貫く人もいれば、大胆なキャリア･チェンジを図る人もいる。今回紹介する佐藤祐輔さんは、日本語教師の道から大きく進路を変えて独学で写真技術を学び、プロの写真家としての道を切り開いたクリエーターだ。

「最初にオーストラリアに来たのは、日本語教師をするため。ワーキング･ホリデー・ビザで来て、小学校で教えながら、日本食レストランでバイトしていました。カメラの道に入ったきっかけは、自発的に好きなことをやって生活ができる仕事をしたかったから。一番身近に考えられたのが写真だったんです。やはり、人生働いている時間が一番長いわけですから、好きな事をしたいですし。
　 最初は、自分を知ってもらうのが大変でした。日本人関係のコミュニティーでボランティアで撮影をしながら、自分の存在を知ってもらうようにして。そのうち日本人からの仕事が少しずつ入るようになって、仕事は写真1本にしました。
　 今は、コーポレート写真やウェディングの写真をメインにやっていますが、コーポレート写真を撮るようになったきっかけは、メルボルンの青年会議所との仕事です。会員をやっている知り合いが「やってくれないか ? 」と声をかけてくれたのが最初ですが、パーティーなど、人が集まる場所で働く機会が多いので、そこで目に留めてもらった人が次の仕事をくれる。仕事と同時に自分をプロモートしている感じです。だから、仕事関係じゃなくてもパーティーなどはなるべく行くようにしています。人と会うのも好きですし、家にこもってちゃ仕事は入ってこないので、仕事がなければ常に外に出る。思わぬ所から仕事が入ってくるものですから。
　 オーストラリアで活動する上で良かった点は、経験なしでも仕事ができたこと。全く経験がなくても、いい作品を撮って、ミーティングで認められれば仕事がもらえます。僕はアシスタントさえしたことがないので、日本だとそういう人が仕事を取っていくことは難しいですよね。僕にとってはいいチャンスでした。

　 オーストラリアの写真の特徴は、日本と比べるとコントラストが強めなことでしょうか。また、フィルムよりもデジタルが多いですね。デジタルのレタッチが入っている写真も多く見ますし、人の手が入っている写真が多いですね。仕事を請ける時も、細かい指示はほとんどありません。ダイナミックな写真を撮ってくれとか、全体の写真とアップの写真をくれ、とかそれぐらい。お互いどういう写真がほしいか分かっているので、あとは日時の指定くらいです。わりと自由にやらせてもらっています。
　 苦労している点は、フォーマルな場所での英語。経験が少ないので、すごく気を使いますね。特にウェディング写真は大変です。人をうまくリラックスさせ、いかにコントロールしながら写真を撮るかがポイントですから。なかなか慣れなくて時間がおすこともあります。それと少しでもコミュニケーションがスムーズにいくように、ニュースをよく見るようにしています。社会情勢などローカルの有名人とやりとりする時、知っておいた方がちょっとした話のネタにもなりますし。
　 この先ですか ? まずは今年半ばに個展を予定しています。今、2眼レフで自分の作品を撮影しているところなんですよ。フィルムは、デジタルよりも感覚で撮れるので、その違いを大切にしています。フィルムで奥行きのある写真を撮るのが常に課題です。ゆくゆくは、自分の作品として撮ったものを売って生活できればいいですね」

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