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幻想の世界 − 神秘の洞窟
〜土ボタル観賞〜

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  日本では夏の風物詩とうたわれるホタルに勝るとも劣らない神秘に満ちた輝きを放つ「土ボタル」は、オーストラリアやニュージーランドの名物の1つ。見る人を魅了するその輝きを観賞しに、ナチュラル・ブリッジ国立公園へ行ってきた。

取材・文=本紙編集部 写真=Tourism Queensland

  おぼろげな淡い光が何千、何万と散りばめられた天井を仰いで息を呑む。人間の作り出すどんな夜景より美しい。青白い生命の光が幻想の世界へと誘う、神秘の洞窟――。

幻想の世界と化す神秘の洞窟
幻想の世界と化す神秘の洞窟

 ゴールドコーストから南西に車で約1時間15分。林道に入ると対向車はほとんどない。暗がりの中、車のライトを煌々と放ちながら蛇行する登り坂をひたすら行く。日光の「いろは坂」を彷彿とさせるいくつものカーブを経て、目的地「ナチュラル・ブリッチ国立公園」に到着した。
  1959年に国立公園に指定された同国立公園は、ポッサムなどの野生動物たちが生息する亜熱帯雨林で覆われている。昼間はピクニックを楽しむ家族連れなどで賑わい、夜は「土ボタル」を観賞しにやって来る人で混み合う。1日中絶えず人間たちを魅了する自然の宝庫だ。
  国立公園の入り口は、出入りする観光バスや多国籍の人々でごった返していた。さまざまな言語が飛び交い賑わう夜の山中というのは、やや奇妙な光景にも思えた。一方でこれほどの人を集客する「土ボタル」とやらに期待感が募る。一体どんな素晴らしい情景に遭遇できるのか ?
「土ボタル」とは、日本で言うホタルとは全く異なり、英語名は「グロー・ワーム」。「光る幼虫」という意味だ。なんでもこの幼虫、お尻の先端部分から発する光で餌となる虫をおびき寄せるのだとか。その光がなんとも幻想的で、見る人を魅了して止まないのだという。そのグロー・ワームが無数に生息する同国立公園の洞窟が観光名所になっているというわけだ。
  足元のみを照らすことが許された懐中電灯(土ボタルは光に弱いため、懐中電灯で足元以外を照らすことは禁じられている)を握りしめ、いよいよ山道を歩き出す。明かりの灯った入り口から離れると、辺りは一気に暗闇と化した。夜の山道を歩くのは生まれて初めての経験。どこかに野獣が潜んでいるのではあるまいか ? などと恐怖感とワクワク感が交錯する。まるで肝試し大会にでも参加しているような心持ちだ。耳を澄ますと聞こえてくる、人々のひそひそ声を確認しては胸を撫で下ろした。
  しばらくすると水の流れる音が暗闇から聞こえてきた。洞窟に流れ込む滝の音だ。来る人が感動してやまないという神秘の洞窟にいよいよ到着した。懐中電灯の明かりを消し、つまずかないように細心の注意を払いながら真っ暗な洞穴に足を踏み入れる。不意に、顔に触れる外気がヒヤッと一変したように感じられた。というより空気が澄み渡るのを感じたと言う方がシックリくる。大音量で流れ落ちる滝の音がそうさせたのかもしれない。
  洞窟の中心部に達したくらいだろうか、歩みを止め、足場をしっかり確保すると顔を上げた。洞窟の壁に宿る淡くおぼろげな土ボタルの光が1つ、2つと目に映る。それらをたどるように視界を徐々に上に移し、ついに天井を仰いだ。するとそこに、思わず息を呑む光景が広がっていた。
  小さな青白い生命の灯が無数に宿る洞窟の天井は、まるで満点の星空のように幻想的だった。言葉は溜息となり、時が止まった。いったいどれだけの時間そこに立ち尽くしていたのか ? ただひたすら見入っていた。 カメラに収めることのできないその美しい情景を、胸にしっかりと焼き付けるように。



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