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離任した川田司・前シドニー日本国総領事に聞く

日豪関係はルネサンスを迎えた この良好な関係維持に努力を

インタビュー・写真=本紙編集部
川田司

 在シドニー日本国総領事を務めた川田司氏が9月21日、離任した。2005年の着任以来2年間、数多くの行事や会合に積極的に足を運び、在留邦人や現地のコミュニティーと熱心に交流を図り、特に2006日豪交流年ではさまざまな文化交流事業の主催・後援に尽力した。川田氏は帰国直前に本紙のインタビューに応じ、2年間のシドニー勤務を総括した。

−−シドニーでの公務を振り返ってみて今の気持ちはいかがですか ?

 やはり任地を去るにあたっては、達成感とやり残したという気持ちの両方があります。シドニーでは皆さんのおかげで楽しく仕事をできたと思います。特に日豪交流年があった2006年は、仕事をしていたというよりも1年中お祭りをやっていたような気分でした(笑)。いずれにしましても、皆さんのご協力を得て交流年も大成功に終わり、日豪関係を高めるため、それなりに満足のいく仕事ができたのではないかと思っています。
  ただ、2年間というのはやはり短く、心残りに思うこともあります。2年間で多くの人と知り合う機会に恵まれましたが、人と知り合いになれば「今度はこんなことをやってみようか」という話も出てきます。また、日豪交流年で深まった日豪関係がさらに活発化するためにやってみたいと思っていたこともあり、若干後ろ髪を引かれる思いです。

−−プライベートの生活で特に印象に残ったことは ?

 これはこの20数年間ずっとそうなんですが、1つはゴルフがぜんぜん上達しなかったこと(笑)。商工会議所の皆さんや日本人会の皆さんとゴルフをやらせていただきましたが、才能がないのか残念ながらあまり進歩がなかった。それがちょっと残念ですね。
  また、私は絵を描くのが好きなのですが、シドニーの海がとてもきれいで、今まであまり描いたことがなかった海の絵を描きました。空も海も真っ青で自然がたいへん素晴らしい。これだけ美しい景色はほかの国ではなかなかないでしょうね。

−−日豪関係の現状についてお考えをお聞かせください。

 過去2年間を振り返ってみると、日豪関係は今、ルネサンス、つまり活性化を迎えていると思います。
  私が着任した当時はよく、「日豪関係は良好で極めていい状況だが、あまりにも良い関係が長く続いているため、多くの人はこの関係を当たり前のように考えて当然視している」という話がありました。
  しかしこの2年間、中国による資源ブームの影響は多分にあったと思いますが、豪州から日本に対する輸出高は300億ドルを超え、対前年度比20%増。日本からの豪州に対する投資は資源分野を中心に増え、豪州から日本への投資もニセコ・スキー場などをはじめ増加しました。
  直近の統計では、豪州に暮らす日本人数は5万9,000人。これは世界第5位の数です。シドニーにも2万3,000人もの日本人がおり、ともに過去数年、約10%ずつ増えています。
  政府レベルでは、社会保障協定ができ、租税条約の改定ができ、安全保障に関する共同宣言が採択され、FTA/EPA交渉が始まりました。日豪関係は過去2年、まさに再活性化された。これは「ルネッサンス」と言っていいのではないでしょうか。
  これもひとえに在豪の邦人の皆さんのご努力によるところが大きいと思いますが、今まで良好だった日豪関係にさらに弾みがついている感じがします。

−−今後の日豪関係の発展のために必要なことは ?

 豪州は日本にとって資源供給国として極めて重要な国です。日本は豪州から石炭、天然ガス、ウランを輸入しているわけですが、これを第1次エネルギーとして使う量に換算すると、日本はそのエネルギー源の18.7%を豪州に頼っていることになるのです。同じ第1次エネルギー源である石油を輸入しているサウジアラビアへの依存度は14.7%ですから、第1次エネルギー源では豪州が最大のエネルギー供給国なんですね。
  また、現在FTAで農産物の問題が話し合われていますが、これから中国が大量消費するようになることを考えると、食料の安定供給源としても豪州というのは日本にとって重要になると思います。それから安全保障面での協力もしていますが、テロとの戦いも含め、豪州の重要性というのはますます増してくるでしょう。
  必要なのはこの重要性を認識し、現在の関係を崩してはならないということですね。豪州というのは60数年前、日本と戦火を交えた国なのです。私が思うに、国と国との関係というのは、注意して良好な関係を保とうと努力していないと何が起こるか分からない。良好な関係が当たり前だと思っていると、ふと思わぬ所から問題が起こる可能性もある。常にお互いが「重要な国なんだ」と認識する努力を怠ってはならないと思っています。
  もちろん、これは政府のレベルだけではなく、皆さん方のビジネスあるいは日常生活についても言えることだと思います。

−−離任にあたってオーストラリアの在留邦人にメッセージをお願いします。

 今日の日豪関係があるのは、まさにここに住んでいる皆さんが、日ごろから日豪関係のために、ビジネス、文化交流、社会奉仕活動などいろいろな面で貢献をされてきたからだろうと思います。ぜひ皆さん方にそういうことを続けてやっていただきたいと思います。
  また、日本の方がどんどん増えているわけですが、増えると存在感も増しますし、問題も起きかねないということもあります。ここ豪州で過ごしやすく楽しく暮らすために、皆さん方がそういった配慮をすることは必要ですし、また皆さん方が配慮することが、ひいては日豪関係全体を良くしていくということでもあると思います。ぜひ皆さんには、エンジョイするとともに、そういったことを念頭に置いて日ごろの生活をしていただければと思います。
  また、日豪プレスが30周年を迎えられるとのこと。おめでとうございます。本当に幅広く活動され、日本人社会の間ではたいへん貴重な情報源であると思います。最近は英語版「jstyle」も創られましたが、日本社会の活動を日本社会から英語で発信するということは、日豪関係を高める上でまさに重要なことだと思いますので、ぜひ引き続き頑張っていただければと思います。 



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