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9月9日に閉幕したアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議の主題は、2013年以降の「ポスト京都議定書」だった。各国(APEC域内)が2030年までに「エネルギー利用効率」を05年比25%以上改善という希望・努力目標を掲げたが、具体的な政策・対策は明示されていない。しかも、ポスト京都議定書の重要課題である二酸化炭素(CO2)の排出量削減については明言されなかった。それでも、声高らかに「シドニー宣言」をしたハワード首相。その陰には、各国の思惑が見え隠れする。今回のエコ・シリーズは、APECに参加した主要4カ国の地球温暖化対策の状況をまとめた。
左から安倍前首相、ハワード首相、胡錦涛国家主席、ブッシュ大統領(Images courtesy of the Australian Government, Department of the Prime Minister and Cabinet) |
下段の表は国連気候変動枠組条約(UNFCCC)が公式サイトで発表している温室効果ガス排出に関するデータである(締約国でない中国は含まれず)。温室効果ガス排出量は1990年を基準とし、日本、豪州、米国ともに削減はおろか、増加傾向にある。
また、全国地球温暖化防止活動推進センターによる、各国別のCO2排出量は、米国が1位(世界の22.1%)、中国が2位(同18.1%)、日本が4位(同4.8%)、オーストラリアが13位(同1.3%)となっている。
? | 京都議定書への対応 | 削減目標(90年比 | 増加率 | ||
日本 | 批准 |
-6%
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1272.095t
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1355.175t
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6.5%
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オーストラリア | 署名のみ |
8%
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423.074t
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529.23t
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25.1%
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米国 | 不支持 |
(-7%)
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6103.283t
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7067.57t
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15.8%
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中国 | 批准 | ― | ― | ― | ? |
※米国の削減目標は参考数値
※出所:UNFCCC 中国は締約国でないためデータなし
米国
国内経済最優先のブッシュ大統領
州・自治体は独自で対策
UNFCCCによると、米国は温室効果ガス排出量世界第1位(2004年発表時)。EUや日本から京都議定書への参加を促されてきたが、一向に批准しそうもない。ホワイトハウスは批准しない理由について「米国内の経済に多大な影響がある」と発表しており、ブッシュ大統領による「先進国だけが温室効果ガスの削減を強いられるのは不平等」、「人工的に排出されるCO2がもたらす地球温暖化への影響は科学的根拠がない」といった発言もあった。
これらは90年代から続いている米経済の好調を維持するのが狙いであり、削減目標(2012年までに90年比マイナス7%)は、事実上不可能と目されているからだ。
また、2005年6月には英有力紙ガーディアンが「京都議定書への署名拒否は、エクソン・モービル社(テキサス州)による、ブッシュ政権への結果的圧力」と報道。これはブッシュ政権のエネルギー政策が原発やクリーン・エネルギー重視と言っておきながら、石油などによる火力発電の成長を含んでいることを示唆しており、ブッシュ大統領の私意も見え隠れしている。
とは言え、05年にアーノルド・シュワルツェネッガー知事がカリフォルニア州の温室効果ガス排出削減目標を「2010年に2000年レベル、2020年に1990年レベルに戻す」といった行政指令に署名。そのほか、フロリダ州とドイツ連邦が今年7月14日、京都議定書に基づいた気候変動対策パートナーシップに署名し共同声明を出すなど、州政府や地方自治体、企業単位での地球温暖化対策は活発に行われており、米国内210以上の自治体が独自に京都議定書に批准している。
中国
「途上国は排出も止むなし」
京都批准も自国問題は棚上げか
中国気象局と中国科学院、国家環境保護総局など12省庁が06年12月に発表した「気候変動国家評価報告」によると、2020年までに中国の平均気温は1.3〜2.1度上昇し、異常気象や自然災害が増加すると報告されている。
中国は京都議定書の締約(批准)国であるが、途上国として削減目標が設けられていない。UNFCCCによれば、中国は温室効果ガス排出量世界第2位(2004年)であり、全国地球温暖化防止活動推進センター(日本)によれば、2006年に中国は米国を抜き、CO2排出量で世界第1位となるなど、経済発展とともに、年々、温室効果ガスの排出量も高まっている。にもかかわらず、「途上国は、かつて先進国が経済発展のために行ってきたのと同様に温室効果ガスの排出は止むを得ない。先進国がまず削減目標をクリアするべき」との姿勢を一貫している。
日本
削減目標に大幅な遅れ
挽回はもはや不可能 !?
環境省の発表によれば、5月29日に開かれた地球温暖化対策推進本部の会合で京都議定書の削減目標の進捗状況が発表され、05年度のCO2排出量は90年度比7.8%増と、極めて厳しい評価となった。日本は今後、2012年までの目標数値に戻すには8.4%も削減する必要がある。
欧州連合(EU)が同年比0.7%削減に成功していることから考えても、「ポスト議定書」を議論する前にやらなければいけない宿題を多く抱えている。さらに、経済成長率は上方修正され、さらなる排出量の増加が予想されているため、「不支持」「途上国」といった態度が明確な米国や中国に比べ、かなりのジレンマを抱えそうだ。
「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の報告では、日本でも地球温暖化の影響と見られる気候変動が見られ、東京は20世紀の100年間で2.9度も平均気温が上昇。日本沿岸で2ミリの海面上昇が見られることからも、急速に環境破壊が進行していることが分かる。
オーストラリア
米追従の経済優先主義
気候変動対策に遅れ
オーストラリアは「米国および開発途上国が(京都議定書の下では)法的に拘束されていない」という理由から京都議定書には批准していない。ただし、削減目標を遵守するという署名は行っている。これは、好調を維持し続けているエネルギー産業などの利益を守りながら、削減目標を遵守できる可能性が極めて低いと連邦政府が判断したためだ。
世界一の輸出量を誇る石炭(世界シェアは5割超)など、豊富な資源をもとに好調な経済を優先する路線を取っているが、米国やEUなどとの違いは対策の遅さが目立つこと。
その分かりやすい例が、英国などで2002年から始まったCO2などの「排出権取引(削減目標値を達成した場合に、その余剰量を金銭を対価として他国へ売却できる制度。ただし、目標値を下回った場合は他国から購入しなければならない)」。オーストラリアは今年になってようやく、CO2排出権取引に本格的に着手した。また地球温暖化懐疑論などの論議もある中で04年ごろから本格的に環境問題に取り組むなど、その慌てぶりが各報道機関で報道されている。こうした対策の出遅れから、オーストラリアのエネルギー消費量は、国際エネルギー機関(IEA)加盟諸国(英、米など26カ国)の平均値に比べ35%も高いという報告が出されている(IEA報告・2005年現在)。
――各国ともに経済成長と環境対策のバランスに苦慮している。しかし、各国が重要視する経済活動も、地球自体を破壊する行為となっては、元も子もない。
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