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【特集】 FIFA World Cup Germany 2006


text by: Jo-z

勝負の明暗を分けた采配  6月13日 日本 1-3 オーストラリア

 優勝候補の筆頭であるブラジルと同組に入ってしまった両チームにとって、絶対に落としたくない初戦。組織的なプレーでチャンスを作る日本とフィジカルで勝るオーストラリアの勝負は、3-1でオーストラリアに軍配が上がった。

  開始6分、最初のチャンスを迎えたのはオーストラリア。

 パスを受けたビドゥカが左足でシュートを放ち、跳ね返ってきたところを再びビドゥカが右足で再び蹴り込むが、川口にセーブされる。14分に今度は福西が約30メートルのミドルシュートを放つが、これは枠の外へ。  そのまま攻守がめまぐるしく入れ替わる中、26分に意外な形で先制のゴールが生まれた。中村のクロスがオーストラリアゴールを守るシュウォーツァーの頭上を越えてオーストラリアゴールへ。オーストラリアの選手がゴールキーパーへのオブストラクション(妨害行為)をアピールするが、審判の判定は覆らず。待望の先取点を上げた日本は、その後もゲームを支配しながら前半を終了。初戦を上々の内容で折り返した。  だが、日本のこのゴールが寝た子を起こしてしまう。

 監督のヒディンクと背番号10のキューウェルだ。前半、ほとんど攻撃に顔を出さなかったキューウェルが積極的にドリブルを仕掛け、オーストラリアにチャンスが生まれるようになると、ヒディンクが最初のカードを切る。徐々に精彩を欠くようになったブレシアーノを下げて、ケイヒルを投入。11分に坪井が負傷交代し、日本ディフェンスのリズムが崩れたとみると、16分にはディフェンダーのムーアを下げて194センチの長身フォワードであるケネディを投入する。得点しなければ負けてしまう状況において、ケネディとビドゥカの2人へ高いボールを放り込み、そこからチャンスを作るパワープレイに出たのだ。

 この采配がピタリと当たる。キューウェルやケイヒルがいい形でボールを持てるようになり、徐々に日本が押し込まれる展開へと試合が傾き始めたのだ。ここで日本も何らかの対策を取るべきだったが、ジーコはまだ動かない。逆にヒディンクが先に最後のカードを切る。中盤のウィルクシャーを下げてフォワードのアロイージを投入し、リスクをかけて攻撃を分厚くしてきたのだ。 この攻撃的な采配こそヒディンクの真骨頂であり、98年のオランダ・02年の韓国と、過去2大会で連続してチームをベスト4へ導いた彼の実績の裏付けである。

 後半34分、ようやくジーコが動いた。フォワードの柳沢に代えて中盤の小野を投入。だが、フィジカル勝負を仕掛けてくるオーストラリアにとって、この交代が効果的とは考えにくい。逆に前線でしつこくボールを追いかけ回していた柳沢がピッチを去ったことで、逆にオーストラリアは自陣でボールをキープすることができるようになり、余裕を持って前線へボールを放り込めるようになった。  これまで川口の好セーブによって再三のピンチを切り抜けてきた日本だったが、39分にその川口が痛恨のミスを犯してしまう。ロングスローに飛び出したがボールに触ることができず、ガラ空きになってしまったゴールに交代出場のケイヒルが押し込み同点とされてしまったのだ。

 日本に残されたカードは1枚。このまま同点でいくのか、それとも1点を取りにいくのか…だが、この状況でもジーコは動かなかった。一方、フォワードを4人にして攻撃を仕掛けてきたオーストラリアの目的がゴール以外にあるはずもなく、5分後の44分にアロイージのアシストからケイヒルが逆転ゴールとなる2点目を上げる。ロスタイムに突入した46分、ようやくジーコは大黒を入れて点を取りに行くが、あまりにも遅すぎた交代だった。逆にケイヒルのパスからアロイージがダメ押しの3点目を決め、3-1でオーストラリアが勝利した。  日本とオーストラリアの選手に3-1というスコアに見合う実力差があったとは思えない。勝負の明暗を分けたのは、ジーコとヒディンクの采配にほかならない。オーストラリアの3点全てが途中交代で入った2人の選手から生まれた(ケイヒル:2ゴール・1アシスト、アロイージ:1ゴール・1アシスト)という事実が全てを物語っている。




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